当選確率を理解しても宝くじを買い続ける理由

2025年5月6日

「宝くじの当選確率は極めて低い」――これは誰もが知る事実です。例えばジャンボ宝くじの1等の当選確率は、数百万分の1というレベル。それでも多くの人が宝くじを買い続けています。この“非合理的とも思える行動”の背後には、人間特有の心理メカニズムがあります。今回は、その理由を心理学・行動経済学の視点から解き明かしていきます。

1. 希望と夢を“買う”行為

最もよく挙げられる理由が、宝くじは「当てること」ではなく「夢を見ること」に価値があるというものです。

• 「当たったら…」という未来への空想
• 日常から解放される一時の高揚感
• 自分もチャンスを持っているという感覚

この“期待感”そのものが報酬となり、当選確率が低いことは“夢の大きさ”をさらに際立たせる効果を生みます。

2. 認知バイアス：自分だけは違うという思い込み

人間は「自分だけは当たるかもしれない」という根拠のない自信を持ちやすい生き物です。

• 代表性バイアス：当選者の事例を見て「自分もいける」と感じる
• 楽観バイアス：不運より幸運が訪れると信じやすい
• 過去の“惜しい”体験が次回の購入動機に

このような認知のゆがみが、確率を知っていても行動を変えない理由の一つです。

3. 小さな投資で“非対称な報酬”を狙う魅力

宝くじは「ローリスク・ハイリターン」の典型例です。

• 数百円で数億円を夢見られる
• 損失は限定的（買った分だけ）
• 「買わなければゼロ、買えば1%未満でもチャンスがある」

この損失と利益の非対称性は、人間の脳にとって非常に魅力的に映り、確率の低さが理屈では理解されても感情が勝る要因となります。

4. 習慣と“逃したくない”心理

長年宝くじを買い続けている人にとって、購入は「習慣」そのものです。

• 決まった売り場・決まった日・決まった枚数
• 「買わないと当たらない」という意識
• 「今回はやめたら当たりそう」という“損失回避”心理

このような習慣的行動は、自動的かつ半ば義務的に継続されることが多いのです。

5. 社会的要因と一体感

年末ジャンボなど、宝くじは“社会的なイベント”としての側面も持ちます。

• 周囲の人も買っている → 一体感が生まれる
• 「今年も恒例だから買う」という季節行事化
• 家族や同僚との話題作り

この“みんながやっている”という雰囲気も、合理性を超えて購入を後押しします。

まとめ

宝くじの当選確率がどれほど低いと理解していても、

• 夢を見たいという欲求
• 心理的バイアス
• 小さな投資で大きな見返りを求める本能
• 習慣と社会的圧力

といった複合的な理由で、人々は買い続けます。宝くじは単なる確率論ではなく、人間の心理を映し出す鏡とも言える存在です。理屈だけでは測れない“夢と希望”が、そこには確かに存在しているのです。